補聴器と手話

我が子は、生まれてから半年位で、補聴器を装用し始めた。生後すぐの新生児聴覚スクリーニングで両耳リファーとなり、約3ヶ月後の診断で重い難聴ということがわかり(確定診断)、その後、生まれた病院とは別の病院を紹介されて、補聴器を装用するに至った。難聴の早期発見、早期療養の開始、というレールには乗れていたのだと思う。

補聴器を装用し始めた当時は、つけるのを嫌がって暴れたり、やっとのことでつけても、その直後にあざやかに外されたりと、なかなか長時間装用することができなかった。しかし、根気よく続けてきた結果か、最近は長時間つけてくれるようになった。

長時間つけてくれるようになれば、あとは補聴器の効果を待つばかりだ。根気よく装用し、うまく言葉が聞き取れていれば、先天性難聴の子供も、聞き取れる範囲で言葉を発するようになる。

我が子はといえば、補聴器の効果がなかなか芳しくない…長時間装用しているが、言葉がなかなか出てこない。やはり補聴器では言葉を聞き取れていないのだろうか。

音声には、「あいうえお、かきくけこ、・・・」といった音以外に、アクセント、抑揚、リズムといった文字には表れない韻律情報がある。「言葉が聞き取れていないのだろうか」というのは、主に前者が聞き取れてなさそう、という意味で使っている。

先天性難聴と一言でいっても、裸耳の聴力は様々だ。一般的には90dB以上だと重度難聴と言われるが、その中でも、聴力90dB台と100dBオーバーとでは言葉の聞こえに関して大きな壁があるように感じる。90dB台だと補聴器装用で言葉を発するようになったという話を聞くことがあるが、100dBオーバーだとこのような話をほとんど聞かなない。

補聴器の効果が芳しくないと、さすがに焦る。

子供は日々大きく成長していく。脳が言葉を欲している時期に、言葉のシャワーを浴びさせる必要がある。でも、補聴器で言葉を聞き取れていないのであれば、我が子は日常生活の中で、言葉というものをインプットできていないことになる。

(文字をまだ読めない)幼児の言語発達という意味において、人工内耳以外(手術が必要なので、実行の容易さという観点からはひとまず除外している)の選択肢としては、補聴器と日本手話がある。

もし、補聴器を長時間つけるようになってから1年後に、やはり聞き取れていないですね、となった場合はどうだろう。子供はその1年間、言語によるインプットができていなかったことになる。

そう考えると、やはり、早期に手話で言語をインプットすることが重要なのではないか、と思えてくる。

つまり、補聴器装用のタイミングで、補聴器の効果を見ながら、手話による言語のインプットも同時に目指す、という両建てで動くことが子供のためになるのではないか。特に重い難聴の子供の場合は、補聴器装用の効果が芳しくないケースもそれなりにあると思うので、目から言語をインプットする、という方向でも動いていた方が良いように思う(あくまで個人的な意見)。

もちろん、手話未経験の親にとってはとても大変だと思う。でも、貴重な子供の言語獲得期は取り戻せない。