新生児聴覚スクリーニングって何?

子供が生まれて間もない、まだ妻が入院中のことだ。妻から電話があった。
「新生児聴覚スクリーニングで両耳ともリファーだった」
「???」僕は、何のことだかさっぱりわからない。
「それって、耳が聞こえないってこと?」僕が聞くと、
「確定診断ではないから、そうと決まったわけではないみたいだけど…」
何なんだ? 新生児聴覚スクリーニングって?

新生児聴覚スクリーニングは、難聴の早期発見のために導入されている耳の検査だ。生後間もなく行われるので、一般的には出産後の入院中に産科で行われる。簡易検査ではあるが、難聴の早期発見に有用なものとして実施されている。

代表的な検査方法として自動聴性脳幹反応検査(自動ABR検査※)がある。これは、音刺激に対する脳内の電気反応を検査するものらしい。赤ちゃんは、僕らが健康診断等で行う、音が聞こえたらボタンを押す、といった通常の聴覚検査ができないので、このように脳内の反応を直接検査する方法で難聴のおそれを検査する。あくまで難聴のおそれを検査するものなので、この結果が確定診断ということではなく、その後の精密検査でより詳細な検査を行う。

精密検査の必要がなければ「パス」、精密検査の必要があれば「リファー」とされ、「リファー」の場合は、生後3ヶ月位までに専門の耳鼻咽喉科での精密検査が必要となる。「リファー」になる赤ちゃんは約0.4%程度のようだ(つまり、毎年約100万人の赤ちゃんが生まれると仮定すると、「リファー」になるのは4000人程度のイメージ)。

この「リファー」の意味は、通常、35dBの音への反応が見られなかったので精密検査が必要です、というものだ。35dBはささやき声程度の音とされているので、ささやき声程度に反応がありませんでした、という検査結果となる。この段階における、赤ちゃんの聞こえについては、発達の問題や耳に羊水や垢がたまっているなど、様々な要因がありうるので、あくまでも難聴のおそれだ。実際に何らかの早期療育が必要な赤ちゃんは1000人に1人か2人と言われているので、「リファー」とされた赤ちゃんのうち半数以上は、精密検査において難聴ではない、と診断されることになるのだろう。

新生児聴覚スクリーニングの後、一般的には生後3ヶ月位までに精密検査を行う。この3ヶ月間、親はもやもやした不安をかかえながら仕事や育児をすることになる。これはなかなか精神的につらい…

難聴の早期発見のために新生児聴覚スクリーングをするのであれば、難聴のおそれありとされた親に対しても早期に必要な情報の提供が必要だと思う。

先天性難聴については、親の知るべき情報が医療、療育、教育、言語、福祉等々、多くの領域にまたがっている。

通常は病院で新生児聴覚スクリーニングの結果や精密検査の結果を聞く事になると思うが、医者は医療のスペシャリストであるが、全ての領域をまたいだスペシャリストではない。病院で提供される情報は先天性難聴児の親に必要な情報の一部に過ぎない。

僕個人としては、我が子の立ち位置や今後の療育、教育の選択肢といった偏りのない全体像を早く知りたかった。

※他にスクリーニング用耳音響放射検査(OAE検査)があるが、これは自動ABRとは検査方法が異なる。