日本のインクルーシブ教育(2)

抽象的な考え方としてのインクルーシブ教育については、調べればなんとなくわかる。でも、それが具体的にどのように制度化されており、教育の現場はどのようになっているのか、というのはなかなかわかりづらい。

制度化の具体例として、障害のある子供の就学先の決定について、保護者の意向がより尊重されるように改正された学校教育法施行令がある(2013年9月)。従来は就学基準※に該当する子供は特別支援学校に就学するのが原則となる考え方だったが、その考え方を改め、保護者の意向や子供1人1人の障害の状態等を総合的に検討した上で、就学先を決定する内容に変更された。

※聴覚障害者に関する就学基準(学校教育法施行令22条の3)

「両耳の聴力レベルがおおむね六〇デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によつても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの」

つまり、従来は、障害の程度が就学基準に該当している子供は、原則として特別支援学校に通う、という決定がされていたようだが、今は、就学基準に該当していても、保護者の意向やその他の観点から通常の学級に通うことが可能になり得る、ということだ。

もちろん、通常の学級ではなく、特別支援学校がいい、特別支援学級がいい、通常の学級に通いながら通級による指導を受けたい等、ニーズは様々だろうが、少なくとも、通常の学級に通いたいというニーズを制度上は汲み取りやすくなっているのだろう。

ただ、通常の学級を選択して入学できたとしても、それでインクルーシブ教育の実現! となるはずもない。障害を持つ子供達がきちんと通常の学級で勉強をして、充実した学校生活をおくることができないと意味がない。

このような環境をどうやって実現させるのか? ここで出てくるのが、「合理的配慮」及びその基礎となる「基礎的環境整備」という概念である。

「合理的配慮」とは、障害のある子供が、他の子供と平等に教育を受けることができるように、学校や学校の設置者が必要かつ適当な変更・調整を行うとことを言う。

「基礎的環境整備」とは、「合理的配慮」の基礎となるものであって、障害のある子供に対する支援について、国、都道府県、市町村といった自治体等がそれぞれ行う教育環境の整備のことを言う。

つまり、自治体等が「基礎的環境整備」という形で主にハード面の環境を作り、学校等が「合理的配慮」という形で主にソフト面の環境を作る、ということなのだろう。

この辺りも制度上の手当てはされており、2011年8月に「障害者基本法」の改正がなされ、そこで社会的障壁の除去について合理的な配慮をすべきという条項が追加されている(4条)。また、これを具体化する形で、2013年6月にいわゆる障害者差別解消法が新たに作られている(2016年4月施行)。

とはいえ、まだ制度上の手当てがされ始めただけであり、これをどうやって実現させるか、というのは現場にかかっている。この辺りは、まだ試行錯誤の段階なようで、まとまった情報を得ることは難しい。

ただ、当事者としては、一般的な情報よりも、自分の子供が通うであろう学校がどこまでケアしてくれるのか、ということこそが重要だろう。やはり、親自身が個別にアプローチしていくしかないのか。

ちなみに、現場の先生方にはインクルーシブ教育の理念には賛成するものの、その実現性について疑問視する人もそれなりにいるようだ…

そりゃそうだろうな…