感音性難聴と伝音性難聴

難聴体験では伝音性難聴の40dBの世界を体験したのだが、難聴には感音性難聴と伝音性難聴とがある(両者の混合もある)。最初の頃は、あまりしっかりと理解ができておらず、感音性難聴は「重い、治らない」、伝音性難聴は「感音性難聴ほど重くない、治るかも」位の単純なイメージしかなかった。このイメージ自体はこれで良いのだろうが、音が耳を通して伝達される仕組みを押さえると、より明確な違いが見えてくる。

音は空気の振動であり、この空気の振動は、①外耳→②中耳→③内耳→④脳の順に伝わっていく。

①外耳はイメージしやすい。耳から鼓膜の手前までをいい、ここで音(空気の振動)が増幅されている。

②中耳は、鼓膜と3つの耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨(←このアブミ骨は人間の体の中で最も小さい骨らしい))の事をいう。音(空気の振動)が、外耳を通って鼓膜を振動させ、この鼓膜の振動が3つの耳小骨に伝わり、今度は耳小骨が振動する。空気の振動が異なる媒介に伝達されていく。

このように、外耳から中耳までのプロセスは、音(空気の振動)が形を変えながら伝わっていくプロセスであり伝音系という。

③内耳は、平衡感覚をつかさどる三半規管と、音を脳に伝える蝸牛から成る。耳小骨の振動へと変換された音(空気の振動)は、その後、蝸牛内のリンパ液の振動に変換される。つまり、骨の振動から液体の振動に変わる。リンパ液の振動を、同じく蝸牛内にある有毛細胞がキャッチして、電気信号に変換する。有毛細胞は蝸牛の中に並んでいて、周波数毎に反応する場所が異なるようだ。そして、この電気信号は、聴神経を通って脳に伝えられる。

④聴神経を通った電気信号は、脳で認知、処理され、僕らは、音を認識する。なお、一言で脳といっても、実際には音の性質等によって処理される脳の場所も異なるようだ。

このように、内耳から脳に至るまでのプロセスは、脳が音を感じるまでのプロセスであり、感音系という。

そして、上述のプロセスのうち、伝音系で生じる障害が伝音性難聴であり、感音系で生じる障害が感音性難聴となる。

普段何気なく聞いている音も、空気の振動→鼓膜の振動→耳小骨の振動→リンパ液の振動→電気信号へと変換され、脳にたどり着く。すごい仕組みだ。後半のリンパ液の振動→電気信号の変換のところは、とてもドラスティックな変換なので、今の僕には理解しきれない…プロセスが脳に近づくにつれ、仕組みが複雑になっていくので、問題が生じた場合は治らない or 治すのが難しいというのも直感的に頷ける気がする(もちろん、心情的に頷きたくはないが…)

ちなみに、人工内耳は空気の振動を電気信号に変換するプロセスを人工的に行う装置である。

また、ABRASSRなどの電気反応を調べて聴力を測定する検査方法は、ここでいう電気信号を何らかの形で測定したものである。新生児聴覚スクリーニングで行った検査方法は自動ABRだったが、これも同様である。

ようやく、自分の子供がどんな検査をして、反応がないとはどういうことか、なんとなく見えてきた…