特別支援教育を受けている難聴者の数は?

特別支援教育とは、障害のある児童生徒1人1人のニーズに合わせて教育を行うというものだ。なので、特別支援教育を受けている難聴者といえば、一般的には、ろう学校もしくは通常の学校の特別支援教室に通っている生徒、または通常の学校の通級による指導を受けている生徒を指す。では、どれ位の数の難聴者が特別支援教育を受けているのだろうか?

これらの学校、学級等に通っている生徒数(2015年5月1日時点)を足し合わせると、以下のような数字になる。

・幼稚部      1174人
・小学部・小学校  5905人
・中学部・中学校  2775人
※「特別支援教育資料(平成27年度)」(文部科学省)の公表データを基に作成。

「小学部・小学校」とは、ろう学校の小学部に通っている生徒数、小学校の特別支援学級に通っている生徒数および小学校で通級による指導を受けている生徒数を足し合わせたものである。「中学部・中学校」も同様。日本全体でこの数字なのだから、少ないのだろう。少ないのだろうが、この数字だけではどの位少ないのかイメージがさっぱりわかない…

そこで、少し数字を加工してみる。生まれてくる赤ちゃんの数は右肩下がりで、2016年は100万人を割り、97万6979人(概数、出所:厚生労働省)ということなので、おもいっきりざっくりと各学年に100万人いると仮定する。幼稚部は3年間で300万人だから、特別支援教育を受けている難聴の子供は約0.04%。小学部・小学校は6年間で600万人だから、同様の難聴の子供は約0.1%。中学部・中学校は3年間で300万人だから、同様の難聴の子供は約0.1%となる。

新生児聴覚スクリーニングおよびその後の精密検査の結果、早期療育が必要な難聴児の数は0.1%~0.2%といわれている。幼稚部に相当する年齢を除き、特別支援教育を受けている子供は約0.1%なので、早期療育が必要とされている難聴児の半数程度は特別支援教育の対象になっているといえそうだ。一方で、幼稚部に相当する年齢においては、約0.04%なので、相当数が特別支援教育の対象にはなっていないようだ。データの取り方にもよるのだろうが、幼稚部のデータには、保育園や幼稚園に通っている子供達の数が含まれていない。ということは、早期療育が必要と判断された難聴児の大半が、ろう学校の幼稚部ではなく、保育園や幼稚園に通っていることになりそうだ。

早期療育が必要だからこそ、新生児聴覚スクリーニングを行っているはずだ。早期ということは、乳幼児の段階からきちんとした療育、教育が大事ということだと思うが、特別支援教育を受けている乳幼児の数は上述の通り少なく、大半は保育園や幼稚園に通っているものと思われる。そうであるなら、保育園や幼稚園で難聴児をどのように保育、教育していくか、ということが重要な論点になりそうなものだが、実際はどうなっているのだろう…