先天性難聴児と共働き

 我が家は共働きだ。将来プランというほどのものではないが、共働きを前提になんとなく将来を考えていたので、共働きは継続したいと思っている。でも、これから先のことを考えると、共働きを続けることができるのか不安だ。

一般的な共働き家庭では、子供を保育園に預けて、夫婦が協力しながら(奥さんの負担の方が多いという話は良く聞くが…)、子育てと仕事を両立しているケースが大半だと思う。最近では、保育園に子供を預けたくても、保育園のキャパシティや保育士が不足している等の理由で預けることができないという、いわゆる待機児童問題が特に都市部で大きくなっており、なかなか解消されない。子供を保育園に預けることができなければ(幼稚園によっては預かり保育を使って対応することも可能なのかもしれないが)、通常は夫婦のどちらかが、勤めている会社を辞めざるを得なくなる。

この待機児童問題の影に隠れている感もあるが、障害児の保育問題も深刻である。障害の種類や程度によって状況が異なるが、特に重度の障害や医療的ケアが必要な障害の場合、保育園は子供を受け入れることができないと聞く。

難聴の場合はどうであろうか?自治体によって対応がかなり異なるようだが、(僕が知る限り)制度上は受け入れてもらえるようだ。もちろん、ただでさえ待機児童問題で荒れているこのご時勢、入れる保証はない…とはいえ、入園できるのであればひと安心、となるだろうか?

むしろ、難聴児固有の問題はここからだ。周りの友達と音声でコミュニケーションをとることが難しい(又はできない)難聴の子供の場合、孤立する可能性がある。保育園では、周りの子供達と遊んだりしながら様々な事を学んでいくのに、それができない可能性がある。また、保育士は保育のプロではあるが、難聴に関することや、難聴児への対応については、過去保育園に難聴の子供がいたとか、身近に難聴の子供がいた等、よほどの事情がない限り、通常はわからないはずだ。

このような環境なので、親としても共働きを継続するかどうかの判断は悩ましい。特に重めの難聴児の親の悩みは大きいと思う。保育園の中で我が子の状態を理解してもらうことへのハードルや、親自身が難聴に向き合う(知識を蓄えて、子供に適切な療育や教育を施す準備等)時間等を考えて、やむなく共働きを断念した人もたくさんいると聞く。

一方、保育園に預ける場合はどうすれば良いのか。(ただでさえ忙しい保育士にどこまで協力をお願いして良いのか…という悩ましい問題はあるが、)親が、難聴に関する基礎情報、絵カードや簡単な手話を保育士等に伝えて、協力をお願いしながら対応している、という話を良く聞く。そこにろう学校の先生や言語聴覚士がサポートに来てくれるケースもあるようだ。

いずれにせよ、僕が知る限り、黙っていても状況は何も変わらないので、子供を保育園に預けるのであれば、親や専門家による積極的な情報提供が必須なんだと思う。

このように、悩んでる人の絶対数が少ないがゆえ、目立ちはしないが、難聴児の親が子供を保育園に預けて共働きを継続するには、多くの悩ましいハードルを越える必要がある。

待機児童問題だけが問題なのではない。