日本で唯一、聴覚障害者のための大学

もちろん学校にもよるが、ろう学校には、乳幼児クラスから、幼稚部、小学部、中学部、高等部まである。では、高等部の次はどうだろうか?ろう学校のような専門の高等教育機関(大学など)はあるのだろうか?

日本には1つだけ、聴覚障害者のための大学があるようだ。

筑波技術大学という4年制の国立大学である。聴覚障害者のための高等教育機関として、1987年に3年制の筑波技術短期大学が開設され、その後、 2005年に4年制の筑波技術大学となっている。

この大学は聴力が概ね60dB以上の聴覚障害者に入学資格があるようだ。参考までに、高度難聴と判断され、(両耳の場合)障害者手帳を取得できる聴力は70dBである。

なお、この筑波技術大学は、聴覚障害者のための大学というだけでなく、視覚障害者のための大学でもある。こちらも日本で唯一だ。聴覚障害者のための学部と視覚障害者のための学部とに分かれており、前者が産業技術学部、後者が保健科学部になる。

聴覚障害者のための学部である産業技術学部は、茨城県つくば市(天久保)にあり、産業情報学科と総合デザイン学科で構成されている。定員は前者が35人、後者が15人だから、1学年の定員は50人と少人数制だ。教職課程をとることもできるようだ。

アメリカにも聴覚障害者のための高等教育機関(大学など)があるが、その歴史はもっと古い。ワシントンD.C.にあるギャローデット大学が世界最古の聴覚障害者のための大学であり、1864年にできている。日本で初めてろう学校ができたのが1878年なので、それよりもずっと前だ。更にいうと、1868年の明治維新よりも前なので、江戸時代に既にあった、ということになる。この大学では、共通言語の1つがアメリカ手話(日本でいうところの日本手話)であり、至るところでアメリカ手話が飛び交っているそうだ。また、これも長い歴史がなせるわざなのであろうか、ろう者による抗議運動をきっかけに、ろう者の学長が選ばれるなど、まさにろう者/聴覚障害者のための大学であるようだ。

これまで、日本に聴覚障害者のための大学があることを知らなかった(もちろん、アメリカにあることも)。日本で唯一なのだから、もう少し情報発信をして存在感を示せればいいのになぁ、などと勝手に思ったりする。

いずれにせよ、親として、このような大学があることはとても心強い。