情報保障とは

情報保障という言葉を聞いたことがあるだろうか。日常的に使う言葉の組み合わせなので、何となくイメージしやすい言葉ではある。これは、ハンディキャップ等により、必要な情報を十分に得ることができない人達に対して、代替手段を使うなどして情報を提供することを指す。聞こえない/聞こえづらい人達に対する情報保障とは、音声言語以外の情報を提供することや、音声言語を聞くことをサポートすることである。

僕がこの言葉をよく耳にするのは、学校における情報保障というテーマに関してだ。1対1の会話とは異なり、学校では話し手である先生の位置が(席にもよるが)結構離れているし、周囲の騒音も結構ある。このような環境では、補聴器人工内耳を装用している子供達であっても、その効果が十分に発揮できないという。とはいえ、聞こえないから分かりません、というわけにもいかない。特に大学等の高等教育機関においては、授業の内容も難しく、教室が大きいこともままあるので、情報保障が重要になってくる。

ということで、大学等の高等教育機関における情報保障を想定してみる。
具体的にどのような情報保障があるのだろうか?

まず、音声言語以外の情報を提供する方法として、文字と手話が考えられる。

文字の場合は、協力者が本人のために先生の音声をノート等に書き取る、ノートテイクという方法がある。パソコンを使って行う場合もあるが、最近だと、こちらが主流なのだろうか。1時間近い授業の内容を書き取るのは非常にスキルと労力が必要なので、2人で対応することが多いようだ。現実的な作業を考えると、先生の話を要約して必要な部分のみを書き取る、という方法を考えがちだと思うが、聞こえない/聞こえづらい人達の立場からすると、それでは不十分らしい。授業の本筋とは異なるような雑談等もカバーして初めて十分な情報保障になる、と聞いたことがある。確かに、そうだろう。

ノートテイクは先生以外の協力者によってなされる情報保障であるが、先生が板書を丁寧に行なったり、充実した講義資料を用意するというのも文字による情報保障になる。特に大学の場合は、板書や講義資料の充実度が教授の個性やポリシーによって随分異なる。板書もスカスカ、資料も簡素な先生の場合は、文字でカバーするのが難しいことは容易に想像できる(授業内容の良し悪しとは別に。念のため…)。

手話の場合は、手話通訳者が本人の見やすい場所に座って、手話で授業の内容を伝える。ここでいう手話が日本語対応手話なのか日本手話なのかも気にはなるが、いずれにせよ専門的な授業を通訳することになるので、手話通訳者に高いスキルが要求される。

次に音声言語を聞くことをサポートする方法として、FM補聴システムの利用がある。

これは、話し手(先生)の声をFM送信機から電波で飛ばし、それをFM受信機で受けて聞くものである。このFM受信機から聞き手(生徒)の装用している補聴器や人工内耳に音声が伝わる仕組みになっている(FM受信機が内蔵されている補聴器もある)。話し手(先生)にFM送信機を付けるだけなので、大掛かりな手間がかからず導入しやすいようだ。

FMという言葉が付いている通り、FMラジオの放送と同様の仕組みで電波を送っている(周波数帯は異なる)。

他にもいろいろあるようだが、実際には大学によっても対応がまちまちらしい。どこの大学が情報保障に力を入れていて、どこがダメで、といった情報も非常に興味深い。