日本語と手話と英語

小さいうちから英語に慣れさせる目的なのだろう、最近は英会話の塾に通っている幼児がたくさんいる。現在、小学校の5、6年生で行われている「外国語活動」が前倒しになり、今後は3、4年生から始まり、5、6年生では教科としての「英語」が始まる。この英語教育の早期化も多分に影響しているのだろう。

3、4年生から英語か…

聴の子供の親であれば、英語の教材を買ってみる、とか、英会話に通わせる、とか、英語圏に旅行をして実際に英語体験をさせるとか、色々と方法が思いつくだろう。少々ハードルが高めだが、親が率先して英語で話しかける、といった方法もあるかもしれない。早いうちから色々とトライした方が良いのだろうか? どの方法が良いのだろうか? 云々…悩みは尽きない。

でも、この悩みって、先天性難聴児の親からすると、なんだかとっても羨ましい…

先天性難聴の子供の場合、小学生になるまでにどれだけ日本語の力を身につけることができるか、という切実な問題がある。

耳から日本語を学ぶことが難しいorできないのだから、そもそもどうやって日本語を覚えるのか、というところから悩みがスタートする。加えて、まずは手話で言語獲得を目指すとした場合、どうやって手話で言葉を覚えさせれば良いのか? 両親が聴者の場合は、そもそも自分達はどうやって手話を覚えれば良いのか? という問題がある(その前に、そもそも手話とは? という段階もある)。さらにさらに、日本手話と日本語を両方使う子供にとっては、ダブルリミテッドなる問題も横たわる。これは、思いっきりざっくり言うと、日本手話も日本語も中途半端になる状態を言う。

聴の子供と比べて、スタート地点があまりにも違うのだ。

それでも、小学校3、4年生になると、子供の前に英語の壁が立ちふさがる。

子供が生まれてすぐ、手話と日本語という2つの言語のはざまで悩み、苦労して、なんとか小学校1、2年生で勉強についていけるだけの日本語能力が身についてきたとする。ここに至るだけでも、すごいことだと思う。が、その直後、今度は第3の言語、英語の登場だ。

我が子にとってはまだ先のことではあるが、事前に英語の対策を立てる余裕なんてあるのだろうか…手話と日本語に振り回されて、それどころではない気がする。

縁あって、難聴の子供の親になってから、専門家でもなんでもないのだが、”言語”というテーマと常に向き合っている。今のところ、日本語、手話、英語と少なくとも3つの言語と向き合っていく必要がありそうだ。

これ以上言語が増えると厳しいかな、と思ったりもするが…