手話だけで子育て?

子供と僕の2人だけで朝から夕方までを過ごしていたある日のことだ。朝から、子供と遊んだり、子供とご飯を食べたり、子供に注意したり、掃除をしたり、夕飯を作ったりと、忙しく動きまわって、ようやく夕方に妻が仕事から帰ってきた。ホッと一息ついたと同時に、ある重大なことに気づいた。今日半日、一切しゃべっていない! 上手くはない手話とジェスチャーだけで半日を過ごせていたのが、妙に嬉しかった。

僕自身、まだまだ未熟ではあるが、それなりに継続して手話の勉強を続けてきている。なんとなくではあるが、手話で伝える力がついてきたのかもしれない。それに加えて、子供も手話をそれなりに認識できるようになり、少しづつ手話での表現ができるようになってきている。ようやく、手話でそれなりのコミュニケーションがとれるようになってきたのだろう。

手話で子育てなんてどうすれば…と思ったときから、結構長い道のりだった。

まだまだなんとなくのレベルではある。子供の聴力に鑑みると、こんなもので喜んでいる場合ではないが、今まで全くできなかったことが少しでもできるようになったので、やっぱり嬉しい。

ただ、言いたいことが伝えきれないもどかしさは常にある。まだ手話が未熟なので、言いたいことは手話やジェスチャーで伝えられる範囲に圧縮しているし、細かい単語、例えば食べ物や動物の名前などは、そもそも単語がわからないことが多い。指文字で表現するものもたくさんあるかと思うが、まだまだ指文字は子供が理解できない。

僕のような手話学習真っ只中の聴者の手話を見ても、子供の手話学習にとって極めて不十分であることは、火を見るよりも明らかなことなので、少しでもたくさんネイティブの手話に触れさせたいと思う。

でも、不十分ではあっても親が手話で自由に会話をすることができるようになれば、子供の言語発達にも精神的な安定にも寄与するものと信じているので、やっぱり、頑張らないといけないと思う。

半日、全く音声言語でしゃべらずに子供とコミュニケーションをとりながら過ごせたことは、とても自信になった。

少しづつ、手話での子育てってこんな感じなんだ、というのがわかってきたかもしれない。